大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和40年(オ)1339号 判決 1967年4月18日

上告人

武友小浪

上告人

宮蔭和衛

右両名訴訟代理人

豊川忠進

被上告人(選定当事者)

藤本彦平

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人豊川忠進の上告理由第一点について。

原判決挙示の証拠によれば、原判決の認定した事実を肯認することができる。そして、民法上の組合的性質を有する頼母子講は、その性質上流動性を有し、設立当初は民法上の組合たる性質が濃厚であるが、講の会合がすすむにつれて、講金の既落札者と未落札者との間における消費貸借の性質が増加して、組合性が後退するため、民法の組合の規定をそのまま適用することはできなくなり、したがつて講の解散についても未落札者全員でこれを決定することができるというべきである。もつとも、その清算の手続において既落札者との関係ではその返掛金の分割弁済の利益を喪失させることは許されないという制約を受けるものと解すべきである。ところで、本件においては、結局、円滑な講の運営できなくなつたため、未落札者全員の一致によつて講を解散したというのであつて、この場合に返掛金の取立等清算事務は未落札者が共同して行なうことができ、既落札者に対する返掛金の請求権は未落札者全員に帰属すべきものである旨を判示した原判決の判断は、原審の確定した事実関係に照らし、当審も正当として是認することができる。

原判決が、所論の点について説示するところがないが所論のような理由不備の違法があるとはいえない。

所論は採用しがたい。

同第二点について。

本件講が沢岷安正が単独で発起人となり、世話人に選任され、講会の開催、掛金の徴収、講金の貸付、借用証書の徴収、保管等一切についての責任をもつていたが、同人が昭和三二年九月頃死亡してから業務執行者が選任されなかつた旨の原判決の事実認定、判断は、その挙示の証拠関係のもとにおいて、これを肯認することができる。

したがつて、論旨第一点において述べたとおり、未落札者の全員たる被上告人および本件選定者らが上告人らに対し本件頼母子講の返掛金取立を共同して行なうことができる旨の原判決の判断は、正当である。

原判決には、所論のような違法はなく、所論は、結局、原審の認定しない事実を前提として、原判決を非難するか、または、原審の専権に属する証拠の取捨・選択を非難するに帰し、採用しがたい。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(横田正俊 柏原語六 田中二郎 下村三郎 松本正雄)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例